「故郷巡礼」【続、夏のパッシブ】
前回の続きです。
全部をご紹介しきれませんがもう少しだけ。
前半の最後に発電所跡が出てきましたが、これはどこかで・・・
ということで
こちらはマイントピア別子の対岸にある端出場水力発電所跡です。
なんと同じ設計、構造だそうです。
美術館でお話してくれたおばあちゃんに
新居浜から来たと伝えると教えてくれました。
端出場(はでば)に発電所ができた数年後に犬島の発電所ができたとの事です。
お話によりますと発電所ができてからは
不夜城と呼ばれるほど煌々と光を放っていたそうです。
公害の問題も発生したのですが
島に住む方々の生活にはありがたい事だったのかもしれません。
新居浜と犬島、建築の歴史が繋がる一瞬ですね。
長い時間を経て、こうして形を変えてその歴史を感じる機会ができました。
美術館まではどこから見ても煙突が目に入ります。
素材の紹介を一つ。
こちらの黒い煉瓦ですが、銅の精製段階で発生するスラグを煉瓦として再生した物です。
(今回の場合のスラグとは銅を精錬するときにでる不純物等々です。)
金属性のスラグからできているのは「からみ」とも呼ぶそうです。
ですので普通の煉瓦ではなく、「からみ煉瓦 」という名前です。
また金属性なので、一つの煉瓦がずっしりと重く (一つ60kgぐらいになるとか)
これを積むのも大変な仕事であったと感じます。
この煉瓦は金属の性質を持つため、熱を蓄熱しやすく、その熱を館内に取り入れています。
こうした素材の性質を利用して美術館の空調に貢献しているという仕組みです。
そしてこの「からみ煉瓦」も・・・
こちらは新居浜駅前の写真なのですが
駅入口の屋根を支える柱部分にからみ煉瓦が使われています。
また、駅前広場にあるモニュメントや花壇にも
からみ煉瓦が使われています。
スラグという副産物の再利用ですが方法は全く同じです。
新居浜のは四坂島産との事です。
歴史をたどる整備ができている事にびっくりですね。
こちらの美術館を訪れてお話を聞いていなければ
こんな近くに同じ煉瓦があるなんて、気づく事のないままで終わっていたでしょう。
からみ煉瓦だけでもかなりの量です。
これを作って積み上げて精錬所を作っていく過程は
大変な作業だったに違いありません。
おばあちゃんは幼少の頃、この上を裸足で歩いて遊んでいたそうです。
目に入る朽ちかけた煙突も素晴らしい景色です。
おかげさまで自然エネルギーやその原理、素材、歴史と
考える事ができ、とても楽しく感じています。
現実的なところ、私達の生活は機械設備がなければ
快適な生活の実現は難しく
今回の精錬所美術館のような究極のパッシブというのは
私達の生活には非現実ではあります。
しかし今回、勉強になることが多くあり興味が掻き立てられます。
パッシブ要素とアクティブ要素についてよく考えなければと感じた
今回の犬島精錬所美術館でした。
美術館にいるおばあちゃんですが
主に日曜日に皆様の来館を待っているそうです。
お話は少し長くなりますが、ためになることばかりです。
機会があれば、ぜひ行ってみてください。
さて、近頃とても寒くなりましたね。雪が降る日も近いでしょうか。
僕は寒いのは苦手です。
そんな12月、この「故郷巡礼」のコーナーを始めて丸二年経ちました。
(ふるさとじゅんれい)です。読めない方がおりました。。。すみませんでした。
残念な事に今年はあまり出かける事ができませんでした。
日々の生活に追われるばかりの一年だったと思います。
来年も建築に関わるよい所をご紹介できればと思います。
今年も一年間ありがとうございました。
カテ違いですが、今日はクリスマスイブのイブですね。
今年もお嫁さんが入るぐらい大きな靴下を置いて寝てみます。
去年はなぜか入っていませんでした。
橋口